正直に書くと、少しどうでもよくなっていた。
1週間、シャンプーをしなかった。理由は特別なものじゃない。忙しかったわけでも、体調が悪かったわけでもない。ただ、やる気が出なかった。それだけだ。
朝起きて、顔を洗って、服を着て、最低限の身支度はする。でも、シャワーを浴びて髪を洗うという行為だけが、妙に遠かった。今日はいいか、明日でいいか。その繰り返しで、気づけば1週間が過ぎていた。
その日はハローワークに行った。
求職活動というほど大げさなものではない。ただ、行かなければならない場所だから行った、という感覚に近い。受付で番号札を取って、順番を待つ。周りには同じような表情の人が並んでいる。誰かと話すわけでもなく、スマホを見るでもなく、時間だけが流れていく。
相談が終わったあと、外に出た。
空気は特別きれいでも汚くもない、いつもの街の匂いだった。そこでふと、ガラスに映った自分の髪を見た。伸びている。少し脂っぽい。別に誰に見せるわけでもないのに、妙に気になった。
そのまま帰るつもりだったが、駅前のカット店の前で足が止まった。
予約不要、短時間、安い。よくある店だ。以前なら「また今度でいい」と通り過ぎていたと思う。でも、その日は違った。考える前にドアを開けていた。
椅子に座って、鏡の前に向かう。
美容師さんは特に何も聞かない。「どれくらい切りますか?」と聞かれて、「短めで」とだけ答えた。それ以上、言葉はいらなかった。シャンプーはない。カットだけ。ハサミの音が規則的に響く。
不思議なもので、髪が落ちていくのを見ていると、少しだけ頭が軽くなった気がした。
劇的な変化はない。人生が好転するわけでもない。ただ、「今の自分でも、これくらいはできる」という感覚が残った。
店を出たあと、風が直接頭に当たった。
シャンプーはしていない。それでも、さっきよりはマシだと思えた。完璧じゃなくていい。清潔感が足りない日があってもいい。ただ、ずっと放置し続ける必要はない。
帰り道、今日やったことを振り返った。
ハローワークに行った。髪を切った。それだけだ。でも、その「それだけ」をやったかどうかは、意外と大きい。何もできない日が続くと、自分がどんどん縮んでいく。でも、小さな行動を一つ挟むだけで、止まっていた感じが少しだけ動く。
たぶん、またやる気が出なくなる日は来る。
シャンプーをしない日も、きっとある。でも、そのたびに完璧を目指す必要はない。今日の自分にできる最小限をやる。それでいい。
1週間シャンプーをしなかったこと自体は、褒められた話じゃない。
でも、そこから何をしたかは、ちゃんと残しておきたい。ハローワーク帰りに髪を切った。それだけの話だけど、今の自分にとっては、確かに一つのログだった。


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