夜中の2時。
寝る前にスマホを触っていて、部屋は薄暗いスタンドライトだけついていた。
外は静かで、人の気配なんてまったくない。こんな時間に来客があるはずもない——そう思っていた。
そのとき突然、「ピンポーン」。
乾いたインターホンの音が、部屋の空気を切り裂くように響いた。
一瞬、呼吸が止まった。
音の余韻が消えていくあいだ、ただ心臓の鼓動だけが妙に大きく感じられた。
こんな時間に鳴るインターホンほど、ひとり暮らしにとって怖いものはない。
私はすぐに玄関には近づかなかった。
スマホを握りしめたまま、まずは部屋の電気をすべて消す。
そして、できるだけ音を立てないように玄関へ向かい、ドアスコープをそっと覗いた。
……誰もいない。
それが逆に怖かった。
いたずらか、酔っ払いか、それとも誰かが私の反応を確認しているのか。
「もう一度鳴るなよ」と願いながら耳を澄ませたが、外は沈黙したままだった。
次に、インターホンのモニター(録画機能つき)を確認した。
そこにも、誰も映っていない。
ただ、廊下の薄暗い風景だけが写っていた。
私はすぐにチェーンをかけ、鍵を二度確認した。
深夜のインターホンは、出なくて正解だ。
相手が本当に必要な用事なら、管理会社や警察を通して連絡が来る。
ドア越しに声を出す必要もないし、反応しないのが一番安全。
しばらくしても状況は変わらなかったので、落ち着くために温かいお茶を入れた。
しかし、その夜は眠りにつくまで何度も玄関の方を気にしてしまった。
翌朝、管理会社に念のため連絡してみたが、特にトラブルや他の住民からの苦情はなかったらしい。
結局、あのインターホンが誰によって、何のために押されたのかはわからずじまいだった。
ただ、一つだけはっきりしたことがある。
ひとり暮らしの防犯は、「不安な時の行動」で決まるということだ。
・夜はドアチェーンを必ずかける
・モニター付きインターホンは必須
・宅配予定がない日は絶対に出ない
・不審なら管理会社か警察へ相談する
・玄関周りに私生活の気配を出さない
この5つができていれば、自分の身は守れると感じた。
夜中のインターホンは、一度経験するだけで“警戒心”という最高の防犯スキルを与えてくれる。
あの夜の恐怖は忘れない。
けれど、あの出来事のおかげで、私は今まで以上に冷静に自分を守れるようになった。
ひとり暮らしは自由で気楽だが、その自由を守るためには、少しの工夫と心構えが必要だ。
そして何より、
「怖いと思ったときは、迷わず自分の安全を最優先にする」
——このシンプルな原則こそ、ひとり暮らしの最大の武器だ。

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