ある日、突然トイレの水が流れなくなった。
正確には、水は流れるのだが、便器の中の水位が上がってしまい、ゆっくりしか引いていかない。明らかに「つまり」が起きている状態だった。
ひとり暮らしをしていると、こういうトラブルは少し焦る。
誰かに相談するわけでもなく、自分でどうにかしなければならないからだ。
最初は「そのうち流れるだろう」と思った。
しかし、もう一度水を流してみると、やはり水位が上がる。
これは完全に詰まっている。
その瞬間、頭に浮かんだのが「吸引カップ」だった。
いわゆる、トイレの詰まりを取るときに使う、ゴムの半球のついたあの道具だ。
正直、今まで使ったことはなかった。
ただ、テレビや漫画などで見たことはある。
「押して引くと詰まりが取れるやつ」である。
近所のホームセンターに行き、吸引カップを買った。
値段は千円もしないくらいだったと思う。
思ったより安い。
家に帰り、早速使ってみることにした。
便器の中に吸引カップを当てて、ゆっくり押す。
そして、少し力を入れて引く。
「ボコッ」
思ったより大きな音がした。
そして、もう一度同じ動作をする。
押す。
引く。
すると、次の瞬間。
「ゴボッ」
という音とともに、水が一気に流れていった。
詰まりが取れたのだ。
あっけないほど簡単だった。
ほんの数回、押して引いただけで解決した。
その瞬間、少しだけ達成感があった。
大きな問題ではない。
しかし、自分で解決できたという感覚は、意外と気持ちがいいものだ。
ひとり暮らしをしていると、こういう小さな出来事がよくある。
電球が切れる。
水道の調子が悪い。
ネットがつながらない。
誰かがやってくれるわけではない。
全部、自分で調べて、自分で解決する。
最初は面倒に感じることもある。
しかし、やってみると意外と簡単だったりする。
今回のトイレの詰まりも、まさにそうだった。
吸引カップという道具は、昔からあるものだ。
とてもシンプルな構造で、電気も使わない。
しかし、そのシンプルな道具が、あっさり問題を解決してくれた。
こういう経験をすると、生活の中にはまだまだ「シンプルな解決方法」があるのかもしれないと思う。
それにしても、吸引カップを家に置いておくのは悪くない。
今回のことで、それがよく分かった。
もしまた詰まったとしても、もう慌てることはない。
押して、引けばいい。
ひとり暮らしの生活というのは、派手な出来事はあまりない。
しかし、こういう小さなトラブルと、それを解決した瞬間の小さな満足感が、日常の中にぽつぽつとある。
トイレの詰まりを解決しただけの話だ。
それでも、その日の夜は、少しだけ生活が整った気がした。
吸引カップを洗って乾かし、トイレの隅に立てかけておいた。
次に使う日は、できれば来ないほうがいい。
しかし、もしまた詰まっても大丈夫だ。
ひとつ、生活のスキルが増えた気がする。


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