5年前、本庄の焼肉キングにひとりで行った夜。気づけば“ひとり焼肉”が普通だった話

1人焼肉

5年前の冬、本庄駅の近くにある「焼肉キング」に、ふと思い立ってひとりで行った。
あの頃は今ほど“ひとりで食べること”に慣れていなくて、正直に言うと入口のドアを開けるまで少し緊張していた。
「焼肉=誰かとワイワイするもの」という固定観念がまだあったし、店員さんに“ひとりです”と伝える瞬間を妙に意識してしまっていたからだ。

店に入ると、特有の香ばしい匂いが一気に鼻をくすぐる。
あの匂いだけで、来てよかったと半分くらいは思えた。

「おひとりさまですか?」
店員さんがそう聞いてくれたときの、変な安心感。
案内されたのは、テーブル席。
ひとりで使うには贅沢すぎるほど広い。
でも逆にそれがよかった。
“ひとり時間を楽しんでいい空間なんだ”と、自然と肩の力が抜けた。

最初に頼んだのは、牛カルビとハラミ。
ジュッと音を立てて焼ける肉を眺めながら、ひとりで焼肉をする不思議な解放感を味わっていた。
自分のペースで焼いて、自分のタイミングで食べられるのが、こんなに気持ちいいとは思わなかった。

ふと周りを見渡すと、驚くことに“ひとり焼肉”の人がちらほらいた。
男女問わず、年齢もバラバラ。
ノートPCを開きながら食べている人もいれば、スマホで映画を見ながら黙々と焼いている人もいた。
「意外とひとり焼肉って普通なんだ」
その時、肩の力が一気に抜けて、自分の中の壁が壊れた気がした。

特に隣の席の30代くらいの男性は、ひとりなのにとても自然体だった。
誰かと会話することなく、淡々と自分の皿を焼いて楽しんでいる。
楽しみ方が“他人に見せるため”ではなく、“自分のため”なんだと感じた。
その姿に妙な説得力を感じて、ひとり焼肉に対する抵抗感が完全に消えた。

食べながら感じたのは、ひとりで外食することって、
“孤独”ではなく、“自立”に近いということ。
誰かと一緒にいるときの楽しさとは違う、もっと静かで落ち着いた喜びがある。
仕事のこと、今後の人生のこと、やりたいことを自由に考えながら食べられるのも良い。
むしろ、こういう時間が自分を整えてくれるんだと気づいた。

焼肉キングはサイドメニューも豊富で、ひとりで来ても飽きない。
キムチ、わかめスープ、ライス、そしてまた肉。
単純な繰り返しなんだけど、それが妙に心地よい。
ひとりで集中して食べると、味の細かいところまで分かる。
「今日のハラミは当たりだな」
そんなことを心の中で呟きながら、ゆっくり食べ進めた。

気づけば1時間以上が経っていた。
周りのひとり焼肉の人たちは、それぞれのペースで食べ終えては帰っていく。
誰も他人のことなんて気にしていない。
店内には“ひとり”という言葉の持つネガティブさはなくて、
むしろひとりで食事を楽しむことが自然な文化としてそこにあった。

会計のとき、店員さんが「またお待ちしております」と笑顔で言ってくれた。
その一言が、ひとり外食の背中を押してくれたように感じた。

あの日の体験がきっかけで、僕はひとりでご飯を食べることに抵抗がなくなった。
むしろ今では、ひとりで行く焼肉は最高のリセット時間になっている。
仕事で悩んだときも、アイデアに詰まったときも、
焼肉の煙と一緒に気持ちが軽くなっていく気がする。

5年前、本庄の焼肉キングで見た“ひとり焼肉の人たち”。
あのときの光景は今でも覚えていて、
「ひとりで生きることは寂しさじゃない」と教えてくれた気がする。

これからも、ひとりで好きな場所に行き、
ひとりで好きなものを食べ、
ひとりの時間をゆっくり味わっていこうと思う。

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