ジムのラック前で深呼吸した。バーにプレートをつけ終えた瞬間、少しだけ手が震えた。フルスクワット65kg×10回。今日のメニューの山場だ。体重68kgの自分にとって、大きな挑戦。普段なら「8回できたら上出来だろう」と思う。でもなぜか今日は「行けるかもしれない」という根拠の薄い自信があった。
1回、2回、フォームはまだ余裕がある。かかとで床を押し返し、背中のアーチを保ち、股関節から沈むことだけ考えた。スクワットは重さとの対話だ。雑念を持ち込むと潰れる。3回目で太腿が温まり、4回目で心拍が上がり始める。5回目は呼吸を整えて、ゆっくり深く沈んだ。鏡越しに映る自分の姿は、まだ戦える顔をしていた。
6回目、脚が震えた。「ここからが本番だ」と心の声がする。7回目では胸に酸素が足りず、つい歯を食いしばる。バーの重みが肩に食い込む。8回目で頭の奥が熱くなり、視界が少し狭くなった。ここでやめれば楽になる。でも、せっかく積み上げた日々を裏切りたくなかった。
9回目、粘った。立ち上がる瞬間、脚の筋繊維が悲鳴を上げた。それでも立てた。「あと1回」。最後の10回目は、重さ以上に気持ちの勝負だった。しゃがんだ深さは自分でも驚くくらいしっかり。そこから立つまでの数秒が長かった。ゆっくりと、しかし確実に膝が伸びていく。立ち上がった瞬間、こぶしを握りしめた。思わず「よし」と小さく声が漏れた。
誰も見ていなくても構わない。こういう瞬間は、自分だけが知っていればいい。筋トレは自己肯定感の通貨だ。 今日の1セットが、明日の自分を強くする。成長はいつも静かで、気付いたら積み上がっている。
思えば、40kgも重かった頃から比べると、随分遠くまで来た。YouTubeでフォームを研究した日。膝が痛んで軽い重量に戻した時期。ジムに行きたくなくても、とりあえずシューズだけ履いて外へ出た夜。全部が今日に繋がっている。
では、なぜ伸びたのか。分析してみた。
・前日6時間以上の睡眠
・トレ前にプロテイン+バナナ
・フォーム重視を継続
・記録を可視化してモチベ維持
・「昨日より1回でも上」を意識
特別な才能はなくても、人は積み重ねれば強くなる。スクワットはそれを教えてくれる競技だと思う。
次の目標は70kg×8回。そしていつか100kgに触れたい。数字に意味があるというより、「成長し続ける人生でいたい」という気持ちが強い。年齢を理由に諦めるより、挑戦し続けるほうがずっと楽しい。
今日のジムログを最後に残す。
フルスクワット:65kg×10(体重68kg)
汗が目に落ちるほど追い込んだ。
心は静かで、胸の奥が熱かった。
またひとつ、自分に勝てた気がする。


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