コールセンターの仕事では、普段の会話ではあまり使わない言葉が次々に出てくる。
「かしこまりました」
「恐れ入ります」
「少々お待ちいただけますでしょうか」
研修で聞いていると、それほど難しく感じない。
ところが実際にロープレをやってみると、意外とすぐに言葉が出てこない。
頭の中では、
「ここは丁寧に言わないと」
と分かっている。
それなのに口が止まる。
普段なら簡単に言える「分かりました」さえ、電話対応になると、
「分かりました……じゃなくて、何と言えばいいんだ?」
と一瞬考えてしまう。
コールセンターで敬語がすぐに出てこなかったら、どうすればいいのだろう。
敬語を考えながら話すと会話が止まる
研修中は、正しい敬語を使おうとする。
これは当然だ。
しかし、
「正しい言葉を使わなければ」
と考えすぎると、今度は会話そのものが不自然になる。
例えばお客様から、
「この件を確認してもらえますか?」
と言われたとする。
普通の会話なら、
「はい、分かりました」
とすぐ返せる。
しかしコールセンターでは、
「分かりましたは丁寧ではないのでは?」
「承知しました?」
「かしこまりました?」
と頭の中で候補を探し始める。
その数秒間、電話では沈黙が発生する。
顔を合わせている会話なら、表情やうなずきで「考えています」と伝えられる。
電話ではそれができない。
だから敬語を完璧にしようとして長く黙るより、まず反応することも大切になる。
最初から全部覚えようとしない
コールセンターには、さまざまな敬語表現がある。
全部を一度に覚えようとすると大変だ。
そこで最初は、頻繁に使う言葉を数個に絞ってしまう。
例えば、
「かしこまりました」
「恐れ入ります」
「少々お待ちください」
「ありがとうございます」
「申し訳ございません」
このあたりを迷わず言えるようにする。
何十種類もの言い回しを覚えるより、まず基本表現を反射的に出せる状態にする。
電話が来るたびに、
「どの敬語を使おう」
とゼロから考えなくて済む。
これはかなり大きい。
「かしこまりました」を一つ持っておく
特に便利なのが「かしこまりました」だ。
お客様から依頼された。
確認を頼まれた。
何かを伝えられた。
そういう場面で使いやすい。
もちろん、どんな場面でもこの一言だけで対応できるわけではない。
それでも、
「何と言えばいいか分からない」
という状態を減らすための基本表現として使いやすい。
電話対応に慣れていない時期は、選択肢が多いほど迷うことがある。
だったら最初は自分の中に「基本の返事」を作っておく。
慣れてきてから表現を増やせばいい。
詰まったら無理に難しい敬語を作らない
敬語が出てこないと焦る。
焦ると、普段使わない言葉をその場で組み立てようとしてしまう。
その結果、さらに不自然になることがある。
それなら、無理に難しい敬語を作らないほうがいい。
簡潔でも丁寧な言い方を選ぶ。
そして必要なら一度確認する。
例えば、
「確認いたしますので、少々お待ちください」
という基本形を持っておけば、その間に次の対応を考えられる。
難しい表現を連発することが、良い電話対応とは限らない。
お客様が理解しやすいことも重要だ。
敬語より先に「間」を恐れない
電話で言葉が出てこなくなると、
「早く何か言わなければ」
と思う。
すると話すスピードが上がる。
言い間違える。
さらに焦る。
この流れに入ると苦しくなる。
ほんの一瞬なら、間があってもいい。
一呼吸置いてから話す。
そのほうが、慌てて変な敬語を使うより自然な場合もある。
ただし、長く調べる必要があるなら無言のまま待たせない。
「確認いたしますので、少々お待ちください」
と伝えてから確認する。
沈黙そのものが悪いのではなく、相手に状況が伝わらない沈黙を長くしないことが重要だと思う。
ロープレで間違えるのはむしろ都合がいい
研修のロープレで敬語を間違えると、
「本番でも間違えるのではないか」
と不安になる。
しかし考え方を変えれば、研修中に間違えたほうがいい。
本番前に弱点が分かるからだ。
「この場面になると、言葉が出てこない」
「この言い回しを毎回間違える」
「保留するときの言葉に迷う」
こうした癖がロープレで見つかれば、その部分だけ練習できる。
全部を勉強し直す必要はない。
自分が止まりやすい場面を一つずつ減らしていけばいい。
自分専用の敬語メモを作る
研修資料には多くの情報が載っている。
しかし実際の電話中に必要なのは、その中の一部だったりする。
そこで自分が詰まった言葉だけをメモする。
例えば、
分かりました
→ かしこまりました
ちょっと待ってください
→ 少々お待ちください
名前を教えてください
→ お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか
もう一度お願いします
→ 恐れ入りますが、もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか
このように、自分が普段使う言葉と仕事で使う言葉をセットにしておく。
自分が一度でも詰まった表現なら記憶にも残りやすい。
一般的な敬語集を丸暗記するより、自分専用の「詰まった言葉集」を作るほうが実用的かもしれない。
声に出さないと電話では出てこない
文章を読むだけなら敬語は理解できる。
問題は、電話中に瞬間的に出せるかどうかだ。
これは別の能力だと思う。
だからメモを読むだけではなく、声に出す。
「かしこまりました」
「少々お待ちください」
「恐れ入りますが、もう一度お願いいたします」
何度か声に出してみる。
すると少しずつ、頭で考える前に口から出るようになる。
電話対応では、この状態が強い。
一日一つ直せばかなり変わる
研修初日から完璧な敬語を使える必要はない。
今日は「かしこまりました」を自然に言えるようにする。
明日は保留するときの言葉を覚える。
次の日は聞き返す言葉を覚える。
一日一つなら負担は小さい。
30日続けば30個だ。
しかも実際には、頻繁に使う表現はそれほど無限にあるわけではない。
何度も同じ表現を使ううちに、自然に定着していく。
敬語だけで電話対応は決まらない
コールセンターというと、きれいな敬語をスラスラ話す人が優秀に見える。
もちろん言葉遣いは大切だ。
しかし、それだけではない。
相手の話を聞く。
必要な情報を確認する。
分からないことを勝手に判断しない。
適切に保留する。
正しい案内をする。
そして相手が理解できる速度で話す。
こちらも重要だ。
多少言葉に詰まったとしても、丁寧に確認して正しい案内ができるほうが、間違った内容を流暢な敬語で話すよりいい。
敬語が出ないのは「能力がない」からではない
普段使っていない言葉が、とっさに出てこないのは不思議ではない。
コールセンター特有の言い回しならなおさらだ。
最初から自然に出てくる人もいる。
時間が必要な人もいる。
重要なのは、出てこなかった言葉をそのままにしないことだ。
一度詰まった。
メモする。
声に出す。
次のロープレで使う。
また詰まったら修正する。
この繰り返しでいい。
敬語は少しずつ「考えなくても出る言葉」になる
最初は一つの返事にも迷う。
「分かりました……いや、かしこまりました」
そんな状態でも、何度も電話対応を繰り返せば変わっていく。
最初は頭の中で変換していた敬語が、そのまま口から出るようになる。
だからコールセンターで敬語がすぐ出てこなくても、必要以上に焦る必要はない。
まず頻繁に使う言葉を数個覚える。
詰まった言葉だけメモする。
声に出して練習する。
ロープレで使ってみる。
そして一日一つずつ直していく。
敬語を完璧にしてから電話に出るのではなく、電話対応を繰り返しながら敬語を自分の言葉にしていく。
そのくらいの考え方のほうが、長く続けるにはちょうどいいのかもしれない。

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