ある日、足の親指の爪を見て驚いた。
爪の先が、少し黒っぽくなっていたのだ。
ぶつけた記憶もないし、痛みもない。ただ、健康な色ではないことだけは分かった。年齢のせいなのか、それとも血行が悪いのか。そんなことを考えながら、しばらく様子を見ることにした。
若い頃なら、あまり気にしなかったかもしれない。
しかし40代を過ぎ、50代が近づくと、小さな体の変化にも敏感になる。白髪が増えたこと、疲れが抜けにくくなったこと、少し歩かないだけで体が重くなること。
足の爪の色も、その延長線上にある「小さなサイン」のように思えた。
デスクワーク中心の生活
当時の私は、ほとんど歩かない生活を送っていた。
仕事では一日中パソコンの前に座り、移動も電車が中心。休日も家で過ごすことが多く、気づけば一日の歩数が三千歩にも届いていない日が続いていた。
「運動不足だな。」
そう思いながらも、特別な運動を始める気力はなかった。
ジムに通うほどの熱意はないし、ランニングも長続きしそうにない。
そんな私にとって、一番現実的だったのが「散歩」だった。
最初は10分だけだった
散歩といっても、本格的なものではない。
夕方、近所を10分から15分くらい歩くだけ。
コンビニまで遠回りをしたり、公園を一周したり、何も考えずに住宅街を歩いたりするだけだった。
最初のうちは、「これで意味があるのかな」と思っていた。
汗をかくほどでもないし、息が切れるわけでもない。運動というより、ただ外を歩いているだけだ。
それでも、毎日少しずつ続けてみた。
雨の日は休んでもいい。疲れている日は短くてもいい。
「ゼロにしないこと」だけを目標にした。
歩いていると頭の中が整理される
散歩を始めて、一番変わったのは体よりも頭の中だった。
家にいると、仕事のことや人間関係のことをぐるぐる考えてしまう。
しかし、不思議なことに歩き始めると、その悩みが少しずつ小さくなっていく。
季節の風を感じたり、知らない家の庭先に咲く花を見たり、小さな公園で遊ぶ子どもたちの声を聞いたり。
そんな何気ない景色を見ていると、「まあ、焦らなくてもいいか」と思えるようになった。
散歩は運動というより、頭の中を整理する時間だったのかもしれない。
足の爪を見て気づいた小さな変化
散歩を始めて数か月ほど経った頃だった。
お風呂上がりに何気なく足の爪を見ると、以前より黒っぽさが目立たなくなっているような気がした。
もちろん、医学的な理由は私には分からない。
たまたま時間の経過で元に戻ったのかもしれないし、生活習慣が少し変わった影響かもしれない。
ただ、自分の中では、「毎日歩くようになってから変わった」という実感があった。
インターネットで調べると、散歩や軽い運動は血流を促すことにつながると言われている。私は専門家ではないので断定はできないが、自分の体験としては、歩く習慣が良い方向に働いたように感じている。
毛細血管という小さな世界
散歩をきっかけに、体の仕組みにも少し興味を持つようになった。
調べてみると、人間の体には無数の毛細血管が張り巡らされていて、酸素や栄養を体の隅々まで運んでいるらしい。
普段は意識することもないけれど、足先や指先のような体の末端ほど、その働きは大切なのだという。
私は医療の専門家ではない。
だから「散歩をすれば毛細血管が発達する」と言い切ることはできないし、足の爪の変化も、あくまで個人的な体験にすぎない。
それでも、「少しでも体を動かすことは、自分の体を大切にすることなんだ」と思うようになった。
小さな習慣は、大きな変化につながる
若い頃は、何かを変えようと思うと大きな目標を立てていた。
毎日10キロ走る。
ジムに週5回通う。
食生活を完璧に改善する。
しかし、そういう目標は長く続かなかった。
50代が近づいた今、むしろ大切なのは「無理をしないこと」なのだと思う。
10分歩くだけでもいい。
エレベーターではなく階段を使うだけでもいい。
スーパーまで少し遠回りして帰るだけでもいい。
その小さな積み重ねが、一年後、二年後には思っている以上の差になるのかもしれない。
散歩は、一人だから続けられた
私は昔から、一人で過ごす時間が嫌いではない。
カフェで一人。
映画も一人。
夜のスーパーも一人。
散歩も同じだった。
誰かと予定を合わせる必要もないし、気分が乗らなければ短く切り上げてもいい。
好きな音楽を聴きながら歩く日もあれば、何も聴かずに風の音だけを感じる日もある。
一人だからこそ、自分のペースで続けられる。
ソロログを書いていると、「一人の時間は寂しいものではなく、自分を整える時間なのかもしれない」と思うことが増えた。
まとめ|体は、毎日の小さな積み重ねで変わるのかもしれない
足の爪が黒くなったことが、散歩を始めるきっかけになった。
最初は「少し歩いてみよう」くらいの軽い気持ちだった。
でも、その10分の散歩が、生活のリズムを変え、気持ちを整え、自分の体に少しだけ目を向ける時間を作ってくれた。
足の爪の色が変わった理由は、本当のところは分からない。
自然に治ったのかもしれないし、生活習慣が影響したのかもしれない。
ただ一つ言えるのは、毎日少しずつ歩くようになってから、自分の体を前より大切に思うようになったということだ。
人は劇的には変われない。
だけど、10分の散歩を一年続けた人は、一年前の自分とは少し違う景色を見ている。
ソロで歩く夜道も、季節の風も、何気なく見ていた足元も。
そんな小さな変化を楽しめるようになったことが、私にとっては一番大きな「改善」だったのかもしれない。


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